名もなく生きよう



泡のように生まれて泡のように死んでいく。
迷いなどないはずなのに・・・・。
子供の事となると心が揺れ動く。

自分は自分らしく。
素の自分であれば良いと思うのだけれど・・・。

家内に留学中の息子の外国の友達は、そうそうたる人たちだ聞かされた。そして、よく自分のお父さんは何をしているのと聞かれるとそうだ。
とりあえずガス会社をやっていると言えば認めてくれるというのを聞いて何ともいえず惨めな思いがした。
哀しいと言うよりも情けないなと・・・。
やっぱり自分は息子にとって、家内にとっても誇りにならない父親なんだなと。やっぱり、自分の生き様は彼等には、受け入れられないのだなと・・・。

自分は、地位だの、名誉だの、富など求めやしない。
ただ、自分は誰にも恥じる事のない生き方をしてきたよと胸を張って言いたい。
ただそれを言ったところで虚しい。

名も求めず、地位も求めず、富貴も求めない。
ただ一途に一人の人間として真実と向き合いたい。
そう思い、そう信じて生きてきた。
今更、息子のために、自分の志を曲げる事はできない。

いつか解ってくれるなんてと思いたいところだか、それも虚しくなる。
ただ自分の志を貫く以外に愛する者に対しての面目は保てない。

愚直にそう信じて生きるしかない。
自分は、自分らしく生きていこう。

でも、なぜかな。
なぜ、周囲の目をそれほどまで気にして生きていかねばならないのかな。
金や権力を追い求める必要があるのかな。
有名にならなければならないのかな。
家柄だな、学歴だのを気にしなければならないのかな。

今までそんな思いに囚われた事なんて一度もなかったのに。

一人、自分の部屋の中で自分と対峙する。
自分は自分で良いではないか。
無理をして自分らしくない事をしたところで、所詮、長続きはしない。
駄目な父親というのならそれはそれで良いではないか。

名もなく、地位もなく。
自分は自分として生きていくしかないさ。
何度も言うよ。
おまえはそう最初に覚悟したはずではないか。





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