経済現象には、爆発的な現象、又、ある時点を越えた瞬間、急激な変動が転じる事が度々起こる。バブルとか、ハイパーインフレと言われる現象が好例である。そして、爆発的な変動が起きるたびに、国家、社会は激震し、人々の生活は、予測を越えた変化によって甚大な被害を被るのである。この様な爆発的な現象を予知し、それに対する対策が立てられれば経済は、より安定したものになる。その為には、爆発的な現象の背後にある仕組みを理解する必要がある。
 この様な爆発的現象の背景には、指数や羃数、複利などの関数が隠されている場合が多い事を理解しておかなければならない。

 現代人は、物価を上昇といった現象として認識するが、しかし、その現象がなぜ起こるのかについては未だに明確にされていない。その現象を引き起こしている原因を解明するための鍵は、物価の構成する方程式にある。物価は、数量と単位貨幣の積を基礎にして形成されるのである。又、物価を計る基準を構成する要素は、数量と単価と単位時間である。故に、物価の上昇は、指数的な爆発をするのである。

 人は、物事を直線的に捉えようとする傾向があるように思える。真実一路、真っ直ぐな生き方とか、一直線とか。しかし、現実の人生は、紆余曲折している場合が多い。変化は直線的というよりも曲線的である。
 変化というのは、足し算ではなく、掛け算を基本としている。つまり、  経済現象は、指数的、乗法的曲線を描く事があるのである。
 変化は、力によって引き起こされる。力は、加速度的な要素である。加速度は速度の積に依って求められる。

 2008年には、世界に流通する貨幣の総量が一京円を超えたと話題になった。
 資産家を呼ぶのでも、かつては、百万長者で事足りたが、時間が経つにつれて百万長者が億万長者となり、今では、億でも足らなくなりつつある。
 経済規模も、万から億へ。億から兆へ。兆から京へと増大し続けている。一体どこまで経済規模は拡大するのであろうか。

 第一次世界大戦後のドイツで、ハイパーインフレーションが起こり、結局、一兆パピエルマルクを一レンテンマルクに交換する事で収束した。

 近年では、ジンバブエにおいて2008年7月現在で2億3100万%とという猛烈なインフレーションに襲われた。

 経済では、時折、この様な爆発的な現象が起こる。変化は、指数的爆発と言われるような現象を引き起こす。そして、この様な急激な変化を理解するためには、指数を理解する必要がある。

 なぜ、経済現象においてこの様な桁違いの現象が発生するのかというと、経済は、観念の世界の事象であるという点がある。また、経済現象の基本が幾何級数的な事象だと言う事に起因している。

 指数は、この様な桁違いな事象を解明したり、説明する時に威力を発揮する。
 桁違いというが、桁違いとは何を意味するのか。桁というのは、位取りを基礎とした概念である。指数は、位取りを確立するうえで重要な概念である。
 桁は、位取りが確立されることによって成立した概念である。つまり、桁違いというのは、一桁、二桁と上昇する意味を持つ。この桁違いの変化を理解するためには、指数的発想や対数的発想が必要となるのである。

 一般に考えられている以上に規模が大きい事を桁違いに大きいと言うが、時折、経済現象は桁違いに大きい事象に発展することがある。
 桁違いに大きいと言うが、では桁とは何を意味するであろうか。

 指数で重要なのは、位取りである。
 位取りというのは、桁を確立する。桁と言う事によって数は、一定の集合を形成することができる。

 我々は、基本的には、10進法の世界で暮らしている。なぜ、基本的にはと言うと全てが10進法でできているわけではないからである。時間は、60進法と12進法を組み合わせてできている。また、コンピューターの世界は、2進法である。
 位取りというのは、10進法ならば、10を1つの位として桁が構成されている数体系を意味する。そして、10進法の場合は、10を底とする。
 現在の経済や物理的空間は、一部の例外を除いて10を底にした10進法に基づいている。つまり、10が一つの単位を構成する数体系を基盤にして経済は成り立っている。
 そして、この位取りの発想の根底には、指数がある。
 なぜ、10なのか。それには、さしたる根拠はない。つまり、有識者が集まってその様に決め、合意に達したからである。何を底とするのかは、任意な問題である。野球はなぜ、九人でやるのか。サッカーは、なぜ、11人でなければならないのかといった問題と同程度である。
 肝心なのは、我々の住む今日の世界は、10を基調とした世界だと言う事である。
 10進法が基調となってのも決して遠い昔のことではない。日本の江戸時代では、貨幣単位は、1両が4分で、一分は、4朱。1朱は4糸目と4進法が取られていた。
 日本で10進法が取られたのは明治維新後である。
 10進法以外の貨幣単位を採用していたのは、日本だけではない。例えば、イギリスでも1971年に10進法に移行するまでは、1ポンド20シリング、1シリング12ペンスであった。
 つまり、10進法の世界になったのは、さほど昔のことではない。

 経済現象の多くは、直線的な軌跡を描かない。曲線的な軌跡を描くものである。故に、経済現象は線形的と言うよりも指数的な現象といえる。指数的という事は、対数的とも言える。経済現象は、指数的軌跡と対数的軌跡が混在している場合が多いのである。

 対数は、複利を直線に変える。時間価値は、複利である。時間価値は、対数である。時間価値は、等比数列である。対数は、等比数列を直線に変える。対数は、等比数列と等差数列を結び付ける。また、等比数列を等差数列に変換する。即ち、対数は、時間価値を平準化する。

 現象を構成する要素は、一つの全体と変化する部分、そして、変化させる力である。全体は、位置として表され、変化する部分は、差として表される。比とは、要因であり、差は結果である。全体は、一つの基準単位とすることができる。部分も一つの単位とすることができる。変化させる力は、変化する部分に対する働きである。
 比は、全体と部分によって成立し、差は力によって決まる。力は方向と量から構成される。
 全体と変化する部分は、比として表すことができる。差は、比率と時間の積である。時間とは、一回転するのに要する時間の長さである。故に、一回転するの要する時間の長さを単位時間で割れば回転数が求められる。全体の量に比と回転数をかけることによって差が明らかになる。差は、回転数と比率の積である。
 この比と差から、現象の背後にある関係、即ち、力の性質を解明するのである。力は速度の積である。

 変化は、回転と比率に分解できる。例えば、企業の利益は、利益率に回転数をかけることで割り出すことができる。 

 経済的変化の基本は足し算ではなく、掛け算である。それは、変化は、力によって起こるからである。
 力は、足し算、即ち、加法的に作用するのではなく、掛け算、即ち、乗法的に作用する。故に、変化は、指数的なものであり、線形的なものではない。変化は幾何級数的な軌跡を描き、算術級数的にはならない。

 また、経済的変化が掛け算だというのは、経済的変化の基本方程式が、回転数かける比率だからである。回転数は、単位期間が設定されることで明らかにされる。故に、経済現象は、指数的な変化である。

 金利も金利と回転期間で計算できる。
 単利か複利かの違いは、一回転に要する期間に置き換えて理解することも可能である。
 一回転するのに、十年かかるのか、一年かかるのか、半年かかるのか、一月かかるのか。金利は、一回転を単位としている。一回転では単利なのである。つまり、単利か、複利かは、単位期間の長さの違いである。

 単位期間を設定することによって指数的現象を線形的な現象に置き換えることができる。

 経済制度は、最初に設定され前提の上に成り立っている。経済は、歴史的産物である。数値的現象として現れる経済現象は、最初に設定された条件の延長線上に導かれる。故に、経済的価値の多くは、初期設定、初期条件が重要となる。

 成長は幾何級数的な事象か、算術級数的な事象なのかは、前提条件の設定の仕方によって変わってくる。
 成長、変化の基準は、差か、比かというのは、単位期間の取り方の問題だからである。

 変化の基本は、足し算ではなく、掛け算である。つまり、指数的なものである。故に、時間と伴に加速度がつき幾何級数的に拡大していく。経済的変化は、線形的、算術級数的な変化ではない。

 我々が日常生活をおくる空間では、力は、質量かける加速度で表現できる。即ち、力は、加速度的な働く。故に、変化は、冪乗(べきじょう)、な軌跡を描く。

 取引は、集合である。取引は足し算的ではなく、掛け算的に連鎖していく。

 経済的変化は、指数曲線的に上昇し、対数曲線的に収束する。
 経済成長は、ロジスティック曲線、成長曲線的な軌跡を辿る場合が多い。ロジスティック曲線や成長曲線は、離散モデルやベアフルストモデルが有名である。離散モデルはカオスへと繋がる。
 経済成長が成長曲線を描くのは、個々の取引に作用反作用の法則が働くからである。即ち、一つの取引の働きには、必ず、同量の取引に順な方向の働きと反対方向の働きがある。その作用反作用によって取引は均衡しているという原則である。そして、取引の方向の逆に働く作用は、負荷となって変化を均衡状態に導く。
 成長を促す作用には必ず成長を抑制する作用が働いている。場に働く力は、最初は成長を加速させるが、一定の頂点を極めると逆に成長を抑制する方向に働くようになる。

 この様な取引の作用反作用が働く背景は、貨幣の循環運動、回転運動がある。つまり、経済は、一定の範囲において均衡するのである。その範囲を画定するのが貨幣の流通量である。貨幣価値の総量は、貨幣の流通量と回転数によって決まる。回転数は取引数に比例する。

 物価も取引の回転速度が速くなると上昇速度も速くなるが、市場が飽和状態になると上昇速度も加速度的に減衰して平衡状態に落ち着いていく。

 又、取引は連鎖的反応であり、フラクタルに伝達される。取引は、自己相似的な事象であり、それは会計に反映される。

 取引を構成する要素には、人的要素、物的要素、貨幣的要素がある。
 取引の有り様、状態は、直接的に市場に影響し、経済現象に働きかける。取引状況は、直接的に経済現象を引き起こしている要因なのである。
 例えば、インフレーションの原因には、人的要因、物的要因、貨幣的要因がある。
 インフレーションには、第一に、需要インフレーション、第二に、供給インフレーション、第三に、貨幣的インフレーションがある。人的要因とは、需要側の問題であり、物的要因というのは、供給側の問題である。
 人的要因というのは、消費の問題である。それに対して、物的要因には、費用に押される形で物価が上昇する事象、産業構造の偏りや歪みによって引き起こされる事象、体制の変化や経済成長の急速な発展に伴って引き起こされる事象、輸出や輸入の不均衡による事象などがあげられる。又、貨幣が要因となるインフレーションには財政による事象と信用制度に起因する事象とがある。
 いずれにしろ、経済現象は、相互牽制の上に成り立っており、相互牽制が働かなくなると幾何級数的に暴発する危険性がある。この様な経済現象を制御するのは国家制度である。

 貨幣価値は、数値的価値である。純粋に数値的価値である貨幣価値は、物理的な制約を受けない。そして、幾何級数的に貨幣価値は増殖する。幾何級数的に増殖する貨幣価値は、際限がなくなる。
 貨幣価値を抑制するのは、物的、人的制約である。物は有限である。人の命にも限りがある。この様な物的、人的制約が経済を抑制する。

 物的制約は、指数的変化を対数的な変化に変換する。それが市場の拡大に伴う質的な変化を引き起こす要因である。

 指数が関係してくるのは、等比数列である。経済が、指数的な変化をするのは、経済が基本的に等比数列的な現象だからである。
 そして、成長の多くが等比級数、即ち、複利的な変化を基調としている。それは、成長に関わる単位期間が一年を基準としているからである。

 故に、経済上の数値は、経済の成長に伴って巨大化する傾向がある。

 ゴルフで賭をするのは、違法である。しかし、お遊び程度、賭をする人は多い。なかには、悪党がいて詐欺的な賭博をしかられることもある。
 例えば、最初のホールに、百円を賭、次のホールから掛け金を倍々にていくのである。そうすると十八番ホールでは、掛け金は、千三百十万七千二百円になる。

 これに似た話として秀吉と曽呂利 新左衛門(そろり しんざえもん)の話が伝わっている。秀吉が曽呂利 新左衛門(そろり しんざえもん)に褒美をやろうとして新左衛門に希望を聞いたところ一日に米を一粒、次の日から倍々にして欲しいと答えたところ、秀吉は、欲のない奴だと思って許したが、一ヶ月後には、十億粒を超えることが解って取り止めたという。

 経済に時間軸を加えると経済的価値は、幾何級数的に増大していく。幾何級数的な拡大というのは加速的な拡大を意味し、際限のない膨張を意味する。膨張というのは、社会的付加を高めることを意味する。例えて言えば、経済成長は、貨幣の流量の増大を前提とし、それだけ、国家財政の拡大を前提とする。国家財政の拡大は、国家の負債を増大させる。経済の幾何級数的な膨張を抑制しようとすれば、経済成長に歯止めをかける必要がでてくる。その為には、時間的価値を抑制するしかないのである。

 かつて高度成長期、日本では、所得倍増計画が打ち上げられた。十年間で所得を倍増しようと言う計画である。十年で所得を倍増しようと言うのは、年間、十%の成長を維持しなければならないことを意味しているのではない。それは、所得が算術級数的に増えていることを意味する。しかし、実際は、幾何級数的な伸びを示すのである。所得を概ね倍増するためには、七パーセント程度の伸びを実現すればいいのである。
 所得というのは、支出と表裏をなすものである。収入が伸びると言う事は、支出も伸びると言う事である。
 社会全体で均衡していても個々の企業は、差が生じる。その差が企業損益となる。全体的に均衡していて部分的に不均衡だという事は、利益をあげている企業ばかりでなく。誰かが損をしていることを意味する。つまり、収益と費用の間には、歪みや偏りがあることを前提としているのである。
 収益と費用の年間の伸び率の差がわずかでも長い期間で見ると収益構造や利益に与える影響は大きいのである。
 一見、老舗企業の様に長いこと事業を継続している企業の方が費用負担は軽減するように思われがちだが、逆に、負担が増大している場合がある。逓減する費用と漸増する費用との構成比率が重要なのである。特に人件費は、幾何級数的に増大する傾向を持っている。それに対し、物的費用は、対数的な動きをする。その為に、多くの企業は、周期的に人員の削減を余儀なくされている。この周期が経済現象に重大な影響を与えているのである。

 変化の単位は、指数的であり、又、対数的に表すことができる。変化の尺度は計算尺で表す事ができるのである。

 経済の変化を表すためには、対数表を用いることも必要なのである。

 成長は、成長曲線を描く。無限に拡大する成長はない。なぜならば、人も資源も有限だからである。いずれは、収束せざるを得ない。収束しなければ無限に発散してしまう。それは、破滅を意味する。故に、成長は、何時かは均衡点に達する。収束しなければ、収束させる方向に変える必要がある。
 故に、成長は、成長曲線を描く。

 数学というと数字を思い浮かべるが、本来数学は、幾何、即ち図形に基礎を置いているという局面を持つ。代数だけが数学なのではない。数学の根底には幾何学もある。音楽も又、数学だと言える。数学の一部には、数値化できない部分がある。





       

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経済数学

1 経済と数学

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