経済数学

5 経済数学

5−5 資産の性格


 企業の基盤は、想像以上に脆弱で不安定なのである。それは、企業基盤を実態的に裏付けている資産価値が表に現れていない上に、流動的だからである。
 経済の実体とは何か。それは物である。物を表しているのが資産勘定である。しかし、物を物として、即ち、数量として表現したら貸借は均衡しない。故に、貨幣価値に換算して計上される。計上される数字は、原価主義においては、過去の取引実績に基づく名目的価値である。物の実体価格、即ち、時価ではない。なぜならば、時価は常に、変動し、定まらず、流動的だからである。
 資産の名目的価値と実体的価値は常に乖離している。名目的価値は固定的であるのに対し、実体的価値は変動的なのである。その乖離が、色々な経済現象を引き起こし、企業経営を根底から揺さぶっている。
 又、名目的価値は内的要因に影響され、実体的価値は、外的要因によって動かされている。

 借り手と貸し手、売り手と買い手があって取引は成り立つ。それが複式簿記的社会の大前提である。この事から、複式簿記では必ず反対勘定を設定することが必要要件とされる。しかし、それは複式簿記上の前提であって必ずしも絶対的要件というわけではない。現に、単式簿記においては、必ずしも反対勘定がなければならないと言うわけではない。そして、単式簿記の典型が、現金出納帳である。
 つまり、複式簿記を基盤とした会計制度では、反対勘定があることをあたかも自明な命題のようにするが、それは、あくまでも相対的な命題なのである。
 例えば、複式簿記上において、自前の資産は、どの様に処理するのかである。結局、反対勘定を設定することによって計上されることになる。

 貨幣の流れは、債権と債務を発生させる。債権と債務は、貨幣が流れることによって生じる名目的価値である。債務は、負債として、名目的貨幣価値を発生させ、債権は、資産として、名目的物的価値を形成する。

 債権価値の決定的要因は、外的要因であり、内的な要因ではない。実質的資産価値を決めるのは、例えば、土地や商品在庫であれば相場や売上である。相場や売上は、市場によって決まるのであり、内的要因、即ち、経営内部の決定によって決まるわけではない。
 それに対して、負債は、約定によって予め定められている。この債権と債務の差が、企業を経営していく上で重要な意味を持つ。つまり、債権価値は不確実であるのに対して、債務は確定しているのである。

 また、債権価値は、収益とは、直接的な関わりがないのに、収益の影響を直接的に受ける。なぜならば、営業収益が不足すれば、負債を増やすか、債権を換金するか、いずれかの手段で資金を調達する必要が生じるからである。

 資産というのは、長期的資金を運用した結果、或いは、長期借入金の裏付けという性格を持つ。
 この様にしてみると資産は、長期的資金の動向を左右する働きがあることが解る。ただ、資産価値は、資金の需要、必要性とは、無関係なところで変動している。それが企業収益、ひいては、景気に微妙な影響を与えているのである。

 変動は、一定な部分との関係によって捉えなければその働きを理解することはできない。
 好例が、損益と費用の関係である。変動費と固定費の関係によって損益構造は、形作られる。

 投資が利益に結びつく、或いは、資産を換金化するのには、一定の時間が必要である。その間資金が寝てしまう。その期間いかにつなぎ資金を調達していくか。その為に期間損益が必要とされたのである。
 近代経済では、時間差が決定的な働きをする。

 資金の性格は、時間や働きによって決まる。資金の性格が、資産と費用の性格を規制し、遺産の性格が負債や資本の性格を規制する。

 例えば、設備や在庫は、長期的な資金の流れによって性格付けられ、費用は、短期的な資金の流れによって性格付けられる。これらの資金の流れは、景気に長期短期の周期をもたらす。
 資産と負債は、表裏の関係にあり、相互に感応し合う。負債は、負の預金であり、預金は、負の負債である。

 資金の性格は、時間や働きによって決まる。資金の性格が、資産と費用の性格を規制し、遺産の性格が負債や資本の性格を規制する。例えば、設備や在庫は、長期的な資金の流れによって性格付けられ、費用は、短期的な資金の流れによって性格付けられる。これらの資金の流れは、景気に長期短期の周期をもたらす。
 借金も財産の一種だという考え方がある。実際、借金は、財産的な働きを持つ。逆に考えると借金は、負の預金であり、預金は、負の借金である。資産と負債は、表裏の関係にある。

 預金が融資に変移し、融資が預金に変移する。銀行にとって預金は負債であり、負債である預金が融資されることによって資産となる。預金と貸付金は表裏一体である。この様な変移、転移が経済の動きを形作っていくのである。

 資金は、収支を形作り、収支は、資金の働きを長期、短期に区分されることによって損益を形成する。

 資金の長期的働き、短期的働きに差がある以上、長期的、短期的資金の働きを考慮して計画的な経済運営が求められる。
 計画にも二種類ある。一つは、統制的計画であり、もう一つは、構造的計画である。前者が結果を重視するのに対して、後者は状況や環境に対する適合、効率を重視する。統制的計画は、前決めで確定的、硬直的な計画なのに対して、構造計画は、人と物、金、時間を効率的に組み立てることを目的としている。統制的計画は、予め結果を設定するが、構造的計画は、予測に基づいて要素、要因を組み立てる。
 一般に、計画経済や国家予算は、前者を言う。それに対して、プロジェクトの様な計画は後者を言う。
 これからは、期間損益、収支予測に基づく構造的計画が経済政策の根幹に位置すべきなのである。
 その為にも長期、短期の資金の働きを明らかにしておく必要がある。

 長期的、短期的資金の働きを知るためには、資産、費用、負債、資本、収益と資金との関係を明らかにする必要がある。
 長期的資金と短期的な資金の働きの関係は、資産と費用の比率に現れる。
 資産は、長期的周期の資金の流れを形成し、費用は短期的周期の資金の流れを形成する。長期的周期の資金は、ストックを短期的周期の資金は、フローを形成し、その比率が、通貨の流量と水準を決める。資産に対する投資によって資金を市場に放出し、収益によって資金を回収する。通貨回転が市場に実質貨幣価値の総量を規制し、回転数が停滞したり、低下すると貨幣の流通量が低下する。
 長期的資金は、市場に流動する資金の水準を示す指標である。長期的資金は、換金化できる速度によって流動性が測られる。
 故に、流動資産と固定資産の比率を明らかにし、貨幣性資産と非貨幣性資産との比率、及び、金融資産と非金融資産の比率、費用性資産と非償却資産との比率を明らかにする。
 貨幣性資産とは、市場取引を経由せずに直接、決済に用いることの可能な資産を言う。即ち、支払準備のために経営主体内部に滞留している資産を言う。それに対して、非貨幣性資産とは、一旦市場取引を経由しないと決済に用いることができない資産を言う。
 金融資産とは、実体的市場に投資されるための準備資金であり、実体的資産との比率が重要となる。
 費用性資産は、長期的資金の回収状況に対する指標であるが、貨幣的裏付けを持っていない。長期的資金の回収状況は、負債勘定の差額としてしか表現されない。
 長期的資金の流れの効率を知るためには、長期借入金÷(減価償却費+税引き後利益)が指標となる。
 会計の構造による働きによって現金の流れる方向を精査し、制御する事が求められる。
 注意しなければならないのは、売上と言えども必ずしも現金収入が同時に伴うとはかぎらない。つまり、期間損益と収支の関係を正しく理解しないと貨幣の短期の働きと、長期の働きの性格の違いを明らかにできない。

 期間損益から経済に与える影響を読みとるためには、資金の流れ、キャッシュフローに置き換える必要がある。経済の変動は、収入と支出の時間的ズレに起因すると言われているからである。

 収入には、一定の形がある。形は時間によって決まる。即ち、不定期の周期による収入と定期的収入の二つがある。定期的な収入には、日単位、週単位、月単位、半年単位、年単位、複数年単位の周期がある。更に細かく言うと一日の動きにも午前、午後による周期がある。又、一生を単位とする収入もある。
 例えば、月給取りの収入は、月に一回と年に二回、月単位と半期単位の二つによって構成される。この様な収入の形は、結果的に、支出の形を規制する。

 収入は、月に一度、年にすると十二回支給される。さらに、年に一度、一生に一度という収入もあり、これらの収入に基づいて生活設計、人生設計がされる。
 収入は、生活費、借金の返済、地代家賃、預金などに分配される。この様な支出が経済の動向を決めている。
 長期的支出には、結婚資金、家の建設資金、出産育児資金、教育資金、老後の資金などがある。

 資金調達、即ち、収入という局面からみると負債と資本と収益が問題となる。負債と資本は、長期的周期の資金の流れを規制し、収入は短期的資金の流れを規制する。負債と資本は、資産と連動し、或いは費用に還元される。収入は、負債や資本に連動し、費用に還元される。
 収益の分配という局面からは、労働分配率と装備率、利益率が問題となる。

 財政問題では、国債の資本化も視野に入れる必要がある。

 公共投資が経済対策として有効なのは、公共投資が長期的資金の働きを生むからである。

 一般に、預金は資産だと考えられているが、金融機関では、預金は負債勘定で処理される。また、銀行券も中央銀行では負債勘定である。これが何を意味するのか、ここに貨幣経済の秘密を解く鍵が隠されている。

 貨幣は、流れていると言うより、厳密に言うと充たされているといった方が妥当であり、一定の水準に保たれることによって一定の働きを維持しているといった方が良い。資産価値が急速に低下するとこの水準が保てなくなるのである。

 固定的な部分が安定していてはじめても経済は落ち着く。そして、固定的な部分の効率化が計られて経済は効率化されるのである。その固定的な部分が不安定なのが今日の経済を混乱させている元凶なのである。
 経済が安定しない原因の一つは、株価の変動や為替の変動と言った一時的変動や短期の変動によって長期的資金の働きが影響を受けることである。
 短期的な変動によって長期的な資金の働きが影響を受けないようにする仕組みを構築しないかぎり、経済の安定は得られない。

 近代経済は、収益や所得、費用が一定化、標準化されることによって安定、発展してきたのである。収益や所得が一定化されることによって信用制度が確立され、長期負債に依る資金調達が可能となったのである。これは企業経営のみならず、家計や財政も然りである。

 そして、長期的資金の流れと働きが資産と負債を形成してきた。

 家計で言えば、住宅ローンのような長期借入金と可処分所得の関係に見られる。ただ注意しなければならないのは、家計の基礎は、現金主義だという点である。

 収益や所得、費用を一定化する過程で、長期的資金の流れと短期的資金の流れが区分され、資本が形成されてきた。また、長期的展望が立ち、計画性が保たれたのである。

 ところが、経済が国際化することによって収益、所得、費用を一定に保つことが困難になってきたのである。特に、一時的な変動が長期的な資金の流れを悪くしていることが問題なのである。長期的な資金の働きと短期的な資金の働きを明確にし、長期、短期の資金の働きに応じた施策や仕組みを構築することが要求されているのである。

 不良債権を強引に処理すれば不良債務が残されるだけである。不良債権を優良債権に変える方策を為政者は採るべきなのである。その為には、為政者は、企業を必要悪のように見ないで、企業が経済において果たしている機能、役割を正しく理解する必要がある。その為には、収益を上げる事が鍵を握っているのである。

 働いている者も、取引相手も、消費者も、国家も、利益の恩恵に浴しているというのに、利益を目の仇にしている。その報いを結局は受ける羽目になるのである。
 儲けることを悪いように言うが、市場経済体制では、企業が収益をあげないことには、経済は機能しなくなるのである。なぜならば、企業は、貨幣や物を、働きに応じて分配する仲介、中継機関だからである。適正な収益を企業が保てなくなれば、忽ち、分配に支障が生じる。

 資産は、財産を素とした概念である。ただし、資産と財産は、本質的に違う。財産というのは、それ自体で成り立つ、現金主義的な概念である。
 それに対し、資産は、相手勘定としてその資産を形成するために必要な資金の出所を明らかにしなければ成り立たない。
 言い方を変えると資産という概念は、債務という概念の対極として生じた概念であり、純粋に会計的概念だと言う事である。

 財産は、所有するだけならば債務は生じない。
 それに対して、資産は、必ず調達資金の源が明記されなければならない。そして、資産は、所有することで債務が発生する。それが財産と決定的に違う点である。
 会計的な概念が成立する以前ならば、財産を持てば悠々自適の生活が保証された。財産は、債務を形成しないのである。借金は、借金、財産は財産である。故に、財産目録と貸借対照表は異質な物なのである。資産を持つことは、対極に債務が発生するのである。
 また、財産は私有物として考えられもした。しかし、企業は、私有物を所有することを許さない。企業は公的機関なのである。資産は。最終的には社会に還元されるべき物なのである。

 資産を持つことは、同時に、対極として債務を負うことを意味し、資産が計上された瞬間、私的所有が否定され、資産は公有物に転化するのである。

 現金主義に従う場合は、換金できない資産を計上する必要はないが、期間損益主義に従うと換金できない資産まで計上しなければならなくなる。

 企業は私的私有を許されないと言う点から見ると、元来、資本主義というのは、社会主義的な要素を持つ思想なのである。

 この様な資産に対する考え方が確立されることによって企業は公器となるのである。この点に対してまだまだ誤解があると思われる。企業は公器なのであり、公器である企業は、私的所有を前提とした財産や現金を蓄えにくい仕組みが確立されているのである。

 生産手段以外の資産を持つことは、企業経営に余計な負荷がかかるような仕組みになっている。資産価値は、会計上、負の価値を計上することによって相殺されるからである。借方と貸方は複式簿記上において均衡している。つまり、会計上、企業経営は、ゼロサムな事象なのである。
 実際の資産が帳簿価格に対して何万倍の価値を持っていたとしても原価主義に基づけば、取得価格において帳簿上は均衡している。この点は、時価なら時価評価した時点の価値で均衡するように操作される。時価評価が問題なのは、仮想的取引を前提とするために、実際の現金の動きが派生しないと言う点である。その点を充分に留意する必要がある。ただ、会計上の数値は、原価主義、時価主義、いずれにしても、ある時点における債権価値を、意味して、会計上の数値において借方、貸方は均衡しているのである。

 貨幣は、交換手段、分配手段としての働き以外に、権利としての働きがある。そして、権利としての働きが債権と債務を派生させるのである。

 負債によって資産は長期的な費用負担を負うこととなる。そして、されは長期的な資金の潜在的な資金の流失を意味する。この様な目に見えない形で蓄積するのである。そして、ある日突然に不良債権として表面化する。又、費用で言えば人件費に関連した費用も累積する性格を持っている。だから、新興企業は、競争力がある。つまり、企業にとって継続は、必ずしも良い結果を招くとはかぎらない。

 資産は、潜在的価値を形成する。

 資産価値とは、帳簿に記載された名目的価値である。実際に対象となる物が持つ実質的価値ではない。資産価値の原則は、当該資産が取引をした時点における取引価格である。それが原価主義である。

 会計の本質は、損益計算だと言う事を忘れてはならない。つまり、期間損益を計算するために会計は成立したと言っていい。
 ここで注意すべきなのは、損益は均衡しているという事である。必然的に貸借も均衡している。これは、実際に均衡しているというのではなく。計算上均衡しているのである。
 損益上均衡しているという事は、誰かが、損をすれば、誰かが得をする仕組みである。しかし、それは期間損益上のことである。実際には、生産物は生産され、そして、消費されている。
 そうなると利益とは何かである。現代人は、利益に振り回されている。しかし、利益は、会計計算上計上される数値であり、貨幣的な実態があるわけではない。利益を計上したからといって利益に相当する現金があるとはかぎらないのである。
 この事は、資産に対して決定的な意味を持つ。帳簿上に計上されている資産価値と実際の資産価値が一致するとはかぎらないのである。つまり、資産価値とは、取引実績を本にして計上された数値だと言う事である。

 何のために、税を課すのかである。税を課す目的は、一つは、行政経費を賄うことである。第二に、所得の再分配によって分配の公平を実現するためである。第三に、社会資本の整備である。第四に、市場取引の捕捉し、通貨の流量を調整する事である。第五に、余剰利益の抑制である。

 以上の点を鑑みると、法人税は、極力、少なくすべきである。なぜならば、法人は公的機関であり、本来、私的所有物ではないからである。また、法人は、現金を貯蓄することが困難な構造となっている。結局、過剰な税は長期的資金に蓄積されてしまうのである。

 又、企業会計は、期間損益主義を基盤としているのに対し、財務や家計は、現金主義会計を基盤としている。即ち、企業会計と財務、家計は、制度的に不連続なのである。税制の働きは、貨幣の回収と循環にある。現金の流れを直接投影しているわけではない期間損益は現金の流れね量を反映しづらい。その点から見ても法人税は、貨幣の流れる量を捕捉するのにはむいていない。
 問題なのは、公と私が曖昧な部分である。公的機関としての企業の性格から見ても私的な所得と見なされる部分は課税されるべきである。

 なぜ、税金が必要とされるのか。それは貨幣の発行量を制御するためである。
 貨幣を回収する必要がなければ税金は必要とされない。税制も中央銀行制度も貨幣を循環させるために、必要とされる。

 資産というのは、とらえどころのない科目なのである。資産は名目的価値と実質的価値がの二つの価値があることがそれを証明している。資産価値というのは、変動的な価値であり、原価であろうと、時価であろうと、いずれにしても会計上に現れている数値はある時点を捉えて計測された数値だからである。
 資産価値はとらえどころがない。それでいて資金の流れに対して潜在的な影響力を及ぼしている科目なのである。それは、資金調達の際、資産が担保されからである。しかも、収益が悪化し、借入資金を担保しなければならない状態に置いては、資産価値が劣化している場合が多い。それが資金上、色々な不都合を生じさせるのである。

 資産とは貸方に位置する勘定である。
 資金の流れる方向は、消費と投資、貯蓄である。貯蓄は、間接的投資だとも言える。故に、基本的に資金は、消費と投資に流れる。
 この様な資金の流れが長期資金と短期資金の違いを生じさせる。

 資産とは、物と債権からなる。負債の価値は固定的であり、表面に表れた価値と原則的に一致いているのに対し、資産の価値は、固定的ではなく、表示されている価値と一致していない物が多い。資産価値は変動的で流動的である。資産価値は、名目的価値と実質的な価値が乖離していて、名目的な働きと実質的な働きの差によって前提条件の変化に従って肯定的作用と否定的な作用、積極的作用と消極的作用、正と負の働きをする。
 資産は、基本的に物としての実体を持ち、通常、正の作用、即ち、現金化の働きがある。 

 資産は、ある意味で貨幣が流れた残像である。信用乗数と言っても貨幣が流れた残像に過ぎない。重要なのは、実際の貨幣の流量である。

 資産、即ち、債権を構成する要素には、使用価値と交換価値がある。交換価値は、流動性の問題である。
 不良債権問題を考える場合、資産、債権の質が劣化したことが原因なのか、それとも、流動性が悪化したことが原因なのかを見極める必要がある。
 例えば、不動産を例にとると問題となっている土地、資産価値が低下した土地の利用価値や使用価値が低下したのか、それとも、土地が売れなくなったのが原因なのか、その点が重要なのである。
 また、不良債権と言うが、本当に不良債権の問題なのか、実際は、不良債務の問題なのかも明らかにしなければならない。債権の対極には、債務があるのであり、債権と債務は一組で考える必要がある。資産価値が下落した、不良債権を安直に処分すると裏付けのない債務、借金だけが取り残される例も生じる。
 又、使用価値のある資産、稼働中の資産でありながら、交換価値が低下している資産もある。その様な資産を流動性がないという理由だけで処分させるのは、角を撓めて牛を殺すような行為である。
 不動産や設備のような固定資産は、長期的な均衡を前提とした資産であり、表裏をなす債務との関係で評価すべき対象なのである。それを短期的な価格の変動によって判断すれば、破綻するのは必定である。
 更に、問題の本質はフローにあるのか、ストックにあるのも重要なことである。
 不況期には、資産価値も収益も悪化する。業績が悪化した場合でも、それが、ストック部分に原因があるのか、フロー部分に原因があるのかによって対策も違ってくる。
 その場合、資産価値は、一時的な低下なのか、長期的な下落なのかを見極めないで、資産価値が下落したと言うだけの理由で借入金の元本の返済を迫れば、事業の継続に支障がでることになる。最悪の場合倒産する。その様な行為は犯罪に近い。
 また、収益に影響を与えるような性格の下落なのか、収益に関係ない部分での下落なのかを明らかにする必要がある。
 収益が悪化したとしても、収益が悪化した原因を把握しなければ、対策のたてようがないのである。

 現在、家を建てようとすると、大工と建築資材、建築費の三つが必要となる。考えてみると、この三つの要素の中で大工と建築資材があれば、家を建てようと思えば建てられるのである。建築費は、絶対条件ではない。
 つまり、経済を実質的な部分で成り立たせているのは、人と物である。
 ところが現代は、「お金」がなければ家は建てられない。それが貨幣経済なのである。

 借方、貸方は、会計上均衡するような仕組みに設定されているのであり、現実に、等し

 期間損益と資金収支の関係は、何を前提としているかが重要な鍵を握っている。

 勘定は、資金と利益に対する働きによって性格付けられる。この点は資産も同じである。
いという保証はない。即ち、借方、貸方の均衡は見かけ上の均衡である。

 会計上の資産とは、資産に類別された勘定である。

 資産は、借方を正の位置とする勘定科目である。

 資産は、資産の領域では正の働きをし、資産の領域外では、負の働きをする。

 資産価値とは、取引が成立した時点に実現した価値と同等の価値があると仮定された価値である。

 資産には、物的要素、人的要素、貨幣的要素がある。

 財の残存価値を資産という。

 資産は、実質勘定である。資産は名目勘定ではない。

 実質勘定は、財としての何等かの実体を持つ。

 償却には、資産の費用化、或いは、費用の資産化の二つの意味がある。
 資産を購入原価、購入価格で記録し、その上で、単位期間の費用に置換する操作である。

 資産の購入価格を元としてそれを単位期間に配分した値が減価償却費である。その値を導き出す方程式は任意である。

 減価償却という思想が確立されたのは、財の価値と貨幣価値が勘定を設定する上で未分化で資本や負債から独立していた証左である。
 つまり減価償却というのは、相手勘定として長期資金の返済が対応すべきなのである。

 減価償却費が日々の資金繰りに直接影響を与えることはない。

 実際的、実務的には、債権価値と債務価値が未分化である場合が多い。減価償却と借入金とは、連動している。しかし、同等同値ではない。それが貸借、損益の歪みの原因でもある。
 債権価値は、実質的価値であり、変動的価値である。債務価値は名目的価値で固定的価値である。

 債権は、即物的価値、即ち、財としての固有の価値を持っている。固有の価値とは、自己完結的価値であり、使用価値である。

 本来、資産は、資産価値、即ち、債権価値と債務価値、それに基づく資金計画の二つの働きから成り立っている。

 資産の費用化とは、価値の量化を意味する。

 償却は、想定された方程式に基づいて導き出される。

 資産は、金融資産、在庫資産、固定資産に分類される。更に、固定資産は、償却資産と非償却資産に分類される。
 又、貨幣資産と非貨幣資産とにも区分される。

 資産の評価には、仕入れ原価、製造原価、時価、清算原価、スクラップ、再購入価格等がある。

 事業は清算されるときにはじめて評価が定まるという宿命を負わされてしまった。

 現代経済では生産の効率化だけが問題とされている。しかし、本来、効率化とは、生産だけでなく、分配や消費の効率化も計られなければならない。そして、生産、分配、消費の相互牽制によって経済は、制御されるべきなのである。
 市場に求められる機能とは、単に、低価格を実現する事ではなく。生産と分配と消費とを均衡させることにある。

 大量生産主義は、生産の効率化を追求する事によって成立する。生産の効率化による大量生産は、大量販売、大量消費を前提としている。
 この様に偏った考え方は、経済的道徳の崩壊をもたらす。その現れが乱開発であり、環境破壊、環境汚染である。また、不景気やバブルと言った経済の不健全な状態である。

 経営実績は、内部事情だけで決まるわけではない。経営者の責任だけを問うたところで景気が改善されるわけではない。

 余剰利益は、長期資金の返済と準備金に充当されるべきなのである。本来、節税対策のために不必要な投資用資産や遊休資産に向けられるべきではない。利益が経営目的とは、無関係な資産に投資されるのは、税法に問題があるからである。長期債務の返済に充てられるべき資金に税がかかるから長期債務が累積されるのである。その為に、経営基盤が脆弱になるのである。





       

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