会議の在り方・会議の場

 多くの人は、会議は、話し合いの場だと思い込んでいるのではないだろうか。あるいは、何かを決める場だと。又は、会議とは、何かを話し合って決める場だと考えている。しかし、それは、会議を現象的にしか捉えていない。会議の存在理由になっていないのである。なぜ、話し合い、何を決めるのか。果たして、会議は、話し合って決めるだけの役割しかないのか。そうではないはずである。また、多くの人は、会議という言葉を話し合いの場、意思決定の場としては、使っていないはずである。確かに、会議では、話し合う。また、何らかの決定下す場合もある。しかし、会議に期待している役割とは、話し合いや意思決定に限定することはできないはずである。

 会議は、会議だけで成り立っているわけではない。会議は部品である。組織を統制するための装置、又は、一つの目的を持った事業を達成するための仕組みの一部に過ぎない。会議を成立させているもの全体を見なければ会議の実体は理解できない。また、会議の在り方も決められないのである。

 会議は、会議単体で成立するのではなく、その他の会議や作業との関連の中で成立する。会議は、一連の作業の中の部品に過ぎない。一つの事業としての仕事全体や恒久的な仕事の即ち、組織の一部として成立している。故に、会議の在り方は、会議を成立させている全体との関連によって判断されるべき事項である。

 組織のあるところには、会議がある。組織は、会議と作業の集合体だと言ってもいい。組織を制御するためには、情報を共有する必要がある。組織は、情報系だと言っても過言ではない。その情報系の要にあるのが会議である。

 情報を以て組織を制御するためには、何らかの基準が必要である。予め何らかの基準を決めて、個々の成員の行動を統制する必要がある。予め定められた基準が、規則であり、予定であり、予算である。予定を体系化したものが計画である。作業を体系化したのが、役割配分をしたのが組織である。情報の共有化とは、計画化であり、組織化である。
 
 進捗状況を確認し、人や金、時間(日程)、物が予定通りに行われているか、余裕、ゆとりがあるかを調べ、そこに改善の必要性や余地の有無を検討、決定し、調整する。それが会議の役割である。確認、対策を決定し、調整(修正、変更)と言う流れを会議は持つのである。その流れに沿って会議の構成や進行は計画されなければならない。
 その為には、予算、予定、計画という基準を以て実績を比較検討できるように予め設定しておく必要がある。更に、本会議の前に予備会議を設け、状況を確認し、本会議を設計し、本会議終了後の補助的会議で作業、実務、即ち、決定事項を、次の本会議までにやっておく手続き、作業に置き換えるのである。
 
 事前、事後の会議は、会議の準備と後始末、そして、作業・実務への変換が主たる目的である。そして、手続きは、事前・事後の会議を補完する事務の流れである。多くが定型化された事務である。この様な手続きは、会議の議題や会議での決定事項をオーソライズし、記録、保存するための一連の事務の流れである。

 予め定められた基準に基づいて資源の再配分や作業、計画の再構築をする場が会議である。物事の多くは、予定通りには行かないものである。予定外、想定外の出来事や不測の事態が起こるのが通例である。その現実に対応するためには、予定や計画には、ある程度の遊びや柔軟性を持たせておく必要がある。そして、中途において予実績を対比し、全体の行動を調整制御する必要がある。それが会議である。 

 会議が一連の作業や組織の部品だとして会議を大別すると会議には、第一に、開始、開会の会議と終了、そして、第二に、中途、中継の会議、第三に、閉会の会議の三つがある。

 開始会議(キック・オフ・ミーティング)は、特別な会議であり、必要に応じて、準備会や予備組織を持つ。そして、基本的に主催者以外に必要に応じて発起人を設定する。

 つまり、会議は、暫定的な組織、準備的な組織によって用意される。それは、株式会社の設立が典型である。株式会社は、株主総会に始まり、株主総会に終わる。組織は、会議体だと言っても差し支えないのである。

 開始、立ち上げ、キック・オフとは、新たな契約を結ぶことを意味する。そこでは、規則が定められ、メンバーが紹介され、組織が作られる。

 そして、最初の全会一致がとられるのである。その後のメンバーは、最初の合意に従う事が会議に加わる時に求められる。それが会議の背景となる組織や事業を成立させる大前提である。

 間違ってはいけない。民主主義といって最初の会合からは、民主主義に敵対する勢力は、排除されているのである。だから、全会一致、全員一致が可能なのである。また、全員一致したところから全ては始まるのである。故に、民主主義の起点は会議である。

 最初の会議を成立させる要件の一つに出席者の資格がある。最初の会議における出席者の資格の最低限のものは、会議の主旨に賛同しているという事である。会議の主旨に最初から反対する者が加わったら、会議は成立しない。民主主義の原理は、多数決の原理ではなく。会議の原理である。つまり、最初の会議の在り方が、民主主義を制約するのである。だから、最初の会議からは、民主主義に敵対する者は排除される。それが民主主義である。

 会議の在り方を決める要素として会議の役割分担と出席者の資格がある。つまり、出席者がどの様な資格、権限を持って会議に出席しているのか。また、どの様な役割を出席者一人一人が会議の中で果たすのかによって会議の在り方は違ってくる。出席者が何らかの集団の代弁者、代理者としての資格を有していれば、代議的会議となり、また、出席者が何らかの権限を持っている時は、組織的会議となる。

 権利と義務というのは、出席者全員が均一に持っている強制力と責務である。権限と責任は、役割や立場によって派生する強制力と責務である。
 この権利と義務が、本会議において保証されることによって民主主義は、始まる。つまり、民主主義の母胎は、議会なのである。

 会議の主要な機能は、プロセス管理である。プロセス管理のための会議の機能は、第一に、立ち上げ・開始。第二に、中継・連絡。第三に、接続。第四に調整。第五に、意思決定。第六に、広報。情報伝達。第七に、統合、統一。特に、意思統一・作業統一。第八に、記録。第九に、終了である。先にも述べたようにこれらの機能は、開始と、中継と終了の三つに大別できる。

 会議は、これらの機能を発揮するために、予備会議や補助会議(打ち合わせ)と手続き、作業を従えている。そして、その予備的会議・補助的会議、手続き、作業がお互いに結びついて、組織全体や事業全体を構成し、成立させているのである。

 会議の決済には、権限の委譲、直接的な作業や事項の採用、基準の設定などがある。そして、基準も禁止事項を定めるやり方と、指示事項を決めるやり方がある。

 会議の構成は多重構造になっている。そして、その構造は一連の流れとなって現れる。採決のための、手続きが好例である。
 会議による決定は、一回の採決で為されると錯覚しているものが多いが、実際は違う。会議は、採決に至るまで採決の有無、採決の方法、採決の手続きに対する合意を順繰りにとった上で採決をとらなければならない。
 表決に関連した原則には、定足数の原則、過半数議決の原則、一事不再議の原則、議員平等の原則、採決は可を諮る原則、不在表決の原則、条件付き表決禁止の原則、表決訂正禁止の原則、修正案採決に関する原則と言う具合に、何重にも安全策が施されている。
 これらの原則を一つ一つ確認する為に、正式の会議、公式の会議では、採決は、何重もの手続き、構造を持っているのである。

 会議の横軸の流れは、原案、決済、指示・告示、報告と言う順である。

 他の要素との関連で成立する会議は、必然的に接続端子、接続部分を持っている。それは、前回の議事録の確認と経過報告、決定事項の確認と今回の議事録の確認である。

 会議と会議をつなぐのは、作業、手続き、補助的・予備的会議である。そして、会議と作業、作業と会議とは議題によって繋がれている。

 個々の会議の内部ではどの様な処理がなされるのであろうか。
 通常業務の中の会議で処理する内容は、第一に作業の速度調整(進捗度、日程の調整)。第二に、資源の配分。第三に、作業の組み替え。第四に、中止。第五に、中断(休止、保留、凍結)。第六に、追加。第七に、修正(変更)。第八に、記録、保存である。この様な機能によって会議の在り方も違ってくる。

 一括処理か、個別処理かによって会議の有り様は違ってくる。幾つかの関連した議案を一括して処理を意図するのか、個々の要素に分割して処理しようとするのかによって会議の設定が違ってくる。
 一括的な処理は、手数が省けるが一項目でも反対があると全項目が通過しなくなる。それに対し、個別処理は、手数がかかるが、一定の項目で歯止めをすることができる。オール・オア・ナッシングが、実を取るかの選択となる。

 我々が仲間と旅行をする時の事を例にあげてみよう。我々は、先ず、旅行の目的を話し合って明らかにするだろう。むろんこれも会議である。その後、メンバー、日程、予算、場所について話し合う事になる。それを一括的に処理するか、メンバーは、メンバー、費用は、費用という場合に個別に処理する場合とでは、その後の展開が違ってくる。また、会議の構成も違う。一概にどちらが正しいという事は言えない。ただ、一括的に処理すべきかどうか、また、一括的に処理すべき事と個別に処理すべき事を予め決めておく必要がある。そして、それによって、話し合いの仕方、話し合いまでに準備しておかなければならない事を予定しておく必要があるのである。

 後追い会議になるか、先行的会議となるかは、会議の設定段階で決まる。それは、設定した会議が、事後承認型会議か、事前承認型会議するかによって決まるのである。会議は、事前に設定されたように動く。なぜならば、会議の要件は、事前に設定されておかなければならないからであり、事前に準備されたこと以上の働きは会議はできないからである。

 アウトプットは、インプットに対応している。そして、それをつなぐのが議題と議事録である。インプットは、前回議事録、報告書(経過・調査・手続き)、提案書、計画書(予算、役割分担・組織、日程・スケジュール)、添付資料、手続き証書、委任状である。そして、アウトプットは、それに対応した決裁書、指示、告示書と次回会議予定である。つまり、会議に提出された事項を指示、告示に変換し、次の会議までにやっておく作業につなげるのが会議だと言えなくもないのである。

 会議の終了は、議事録によって確認される。




        


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