会議の構成

 会議の構成要素は、第一に、概念のレイアウトである。第二に、空間のレイアウトである。第三の時間のレイアウトである。第四に構成要素のレイアウト、即ち、議事の式次第の配置である。である。第五に、人のレイアウト、即ち、会議の役割分担である。

 概念のレイアウト、配置とは、議題内部の構成である。概念のレイアウトは、主催者が担う。つまり、会議の位置付け、会議が採用する規則、原則、法、予算の構成が概念構成である。これは会議の背景となる組織や事業の要請によってなされる。ゆえに、概念設計は、主催者が担うのである。

 会議を成立させるのに必要な要素は、第一に、定足数、第二に、場所、第三に、時間、第四に、役割分担、第五に、議題、第六に、資料、第七に、記録、第八に、処理である。定足数というのは、会議が成立するために必要な出席者の人数である。つまり、定足数は、会議が成立するための出席者のことである。
 これらが会議の要件になる。

 空間のレイアウトとは、議場のレイアウトである。そして、これは、事務局が担当する。会議は、場を共有することによって成り立っている。故に、場のレイアウトというのは、非常に重要である。
 場というのは。物理的な場のみを最近では指しているのではない。コンピューターや通信技術の発達により、通信網やインターネットといった情報系が作り出す空間もさすように変わってきたきた。現在では、この様な情報系の場のレイアウトも会議のレイアウトとして考えられるようになってきた。

 国家や都市計画は、会議場(広場も含め)を中心になされてきた。この事からも、物理的空間の配置は、重要な意味がある。会議の成否は、物理的空間のレイアウトにかなり影響を受ける。

 時間のレイアウトは、議事の日程と進行である。これは、議長と、事務局が担当する。会議そのものがプロセスである。しかも、順序のありプロセスである。順序、段取りに前後があると、議事にブレーキがかかる。議事の処理手順は、慎重に組まなければならない。議事の展開から、時間のレイアウトは、構成のレイアウトとも絡んでくる。
 時間の配置は、会議を開催してから閉会するまでの過程の配置である。段取りである。会議の招集手続きでもある。

 構成のレイアウトとは、議事、議題の構成である。また、議事を進行する上での議題の配置、物的配置である。故に、構成のレイアウトは、議長が主になり、事務局が補佐する形で担当する。
 議題を進行するための段取り、手順である。議題の主旨、目的にそってどの様に処理をするのかを構成することである。会議の概念のレイアウトは、発表者、提案者が担当する。その為に、議長と、発表者提案者、事務局は、事前に打ち合わせ(予備的会議)をしておく必要がある。
 むろん会議全体の概念設計も必要である。しかし、会議の実質は議題が構成する。会議の実質的な機能は、会議自体の概念ではなく、個々の議題の概念によっている。故に、会議に実効力を持たせようとしたら、個々の議題の処理をどうするかを予め設定しておく必要がある。

 会議には、過程がある。順番がある。会議を成立させる要素を順番に並べ、予定を組む事が構成の配置である。その為には、議事の進行に共通する法則を明らかにする必要がある。

 議題毎に前処理・後処理のがある。議題は、発議、本論、結議と展開する。前処理は、議事の進行の手順、処理方法を明らかに、事後処理は、決議事項、次会までにやっておく事その後の手続きや業務処理の手順、日程を明らかにする。必要な場合は、決定事項を指示命令とその伝達手続きに置き換えられる。

 処理の仕方には、一括処理(総括処理)と個別処理と複合処理がある。複数の項目があった場合、一つ一つの項目を一括して処理する場合と、先ず、全ての項目の報告をしてから本論にはいると言った場合がある。また、いきなり本論にはいるという場合もある。この様に、議題の処理の仕方は複数あり、それをどの様に処理をするかの組み合わせを前もって決めておく必要がある。処理の仕方によって会議の構成が変わってくる。
 例えば、旅行を例に挙げると、日程、メンバー、場所、予算を一括的に処理するのか、個別に処理をするのかと言った問題である。

 ちなみに、この日程、メンバー、場所、予算は、時間のレイアウト、人のレイアウト、空間のレイアウト、構成のレイアウトに相当し、それぞれが独自の展開を持っている。そして、その展開毎に会議を組み合わせなければならない。

 例えば、日付にも、発足の日付、旅行の主旨目的と言った概念を決める日付、メンバーと役割分担を決める日付、旅行の日付と言った具合に、それぞれの進捗状況に応じていくつもの日付がある。それを時系列に並べたのが、計画である。また、場所も発足する場所、打ち合わせをする場所、行く場所、泊まる場所という具合にいくつもの場所がある。この様に複数の要素を組み合わせることによって会議の構成は決まる。よく5W1Hと言うことを言う者がいるが、それは、一断面を意味するものであり、それに捕らわれると計画の全貌を見失う危険性がある。

 本論を構成する要素には、第一に報告、連絡、第二に、説明、第三に、指示、命令、第四に、相談(問題提起)、第五に、提案、発意、第六に、質疑応答、第七に、意見交換、討議、討論、第八に採決、第九に、確認、第十に、記録、保存の十ある。これらの要素が、会議の作業である。これらの要素を手順に組み合わせて議事は進行していく。

 発議は、通常、第一の報告、第二の説明、第三の指示・命令、第四の問題提起、第五の提案、そして、場合によって第七の意見交換から始まる。

 一般に、議事は、報告に始まり、確認に終わると言われている。つまり、通常の会議は、報告から始まる。ただし、報告は、通常前回の会議を受けて、ないし、流れでされるものであるから、初回の会議の場合、報告すべき事案を持っていない場合がある。

 説明は、オリエンテーションやガイダンスという形で、前処理段階を形成する。長期にわたる計画や事業、また、恒久的な組織は、発足時点で説明会を持ったほうが、基礎が固まる。その際の、説明は、以後の展開の予定、予告も含まれる。

 また、問題提起は、発意、発案によって始まる。根本的に会議とは、問題提起に始まると言っていい。問題が提起され、それを解決する過程で会議は、成立する。

 報告の仕方には、第一に、部門毎、第二に、テーマ・課題毎、第三に項目毎、第四に、議長等、役職者によるものがある。

 報告の種類には、経過報告、状況報告などがある。報告というのは、事後的な情報である。確定して指示なども報告事項に含まれる。

 連絡とは、会議や議事に関与した情報の伝達である。報告が事後的なものならば、連絡は、事前的な情報の伝達である。連絡事項は、議事の進行上、余り重要な影響を持たない事項が多い。故に、連絡事項の取り扱いは、会議の本論とは、別途、追加的に考えた方が妥当である。

 採決とは、意思決定と言うよりも処理と言った方がいい。何らかの結論を出すことであり、何が何でも決めてしまうという事を意味するのではない。保留することも、先送りすることも、権限を移譲したり、一任することも含まれているのである。

 日本人が採決を取れないのは、採決イコール、多数決だという思いこみがあるからである。日常的な仕事の中で多数決で決められる事は極めて稀である。一任や委託、また、全会一致で決める事の方が多い。
 会議では何かを決めなければならない。そして、議決というのは、多数決だというの思いこみを多くの人が持っている。
 そしてこの思いこみによって、会議を適切に処理することができなくなり、会議嫌いを作る原因となっている。会議とは、集団的、組織的処理をする場であり、その処理の一つとして決定があるのである。しかもその決定は、必ずしも最終的な決定である必要はない。要するに処理の仕方を明らかにすればいいだけなのである。

 実務的会議は、時間を短くし、頻度を多くすると効果的である。それは、実務的会議では、話し合う事よりも、予め決めた事、即ち、予算や計画、予定の調整が主たる仕事だからである。それを会議というと、頑(かたく)なに考え、形式に捕らわれて実を失うと、やたらに時間が長い癖に成果が乏しく、実際は、会議外の非公式な集まり(会議)で処理されている様なことにもなるのである。会議が始まってから、準備をしても遅いのである。会議というのは、決定機関と言うよりも調整機関的性格の方が強いのである。

 物的な構成とは、会議に必要な器材や設備、装置、資料の構成である。これらの構成は、議事、議題の必要から生じる。議題との関連がない器材、設備、装置、資料は、議事の進行の妨げになる。逆に、議事の進行に必要な器材、設備、装置、資料が欠けると会議そのものが成立しなくなる可能性がある。基本的に会議は、成果物を以て確認し、繋げていく。成果物の作成過程が、作業そのものを示唆する場合が多い。その為に、この物的構成を計画することが、会議の目的の目安となる。

 例えば、何らかの調査を行う場合、調査書、ないし、調査の報告書を作成する過程が、調査そのものの作業を具現化している場合である。つまり、調査書を作成する過程が、調査そのものを示唆しているという事である。それ故に、成果物の作成は、会議の一つの目標となる。

 人のレイアウトは、会議の役割分担や会議の運営組織の構築で、主として主催者が担当する。
 会議を構成する役割は、第一に出席者。正式メンバー。第二に、議長。第三に、発表者。第四に、書記。第五に事務局。第六に、主催者(招集者)である。これら会議を構成する要素をどう組み立てるかが、人のレイアウトである。

 会議が成功するか、否かは、会議の出席者の問題に帰す部分が大きい。会議の成否は、会議の出席者にかかっていると言っても過言ではない。
 会議の出席者が自分の能力を最大限発揮するためには、会議の出席者の権利と義務が明らかにされていなければならない。出席者に与えられた権利は、即ち、会議を成立させる力となる。出席者に必要な権利が保障されていなければ、会議そのものが効力を発揮することはできない。
 また、出席者にどの様な権限と責任が与えられているかによって会議の性格は異なってくる。特に、代議制の場合、有権者が代議員に与えた権限と責任が重要な要件となる。

 代表会議にも代議的会議と組織的会議がある。代議的会議の典型は、議会であり、組織的会議の典型は、閣議である。代議的会議とは、権利と義務によって成り立っている会議であり、組織的会議というのは、権限と責任によって成り立っている会議である。
 組織的会議は、機動的な意思決定を可能とする。即決できる会議である。各部門の責任者が報告すると同時に、その場で組織的に決済することができるからである。ただ多くの日本人は、組織的な会議を有効に使いこなせないでいる。

 会議は、人的な規模によっても構成が変わってくる。二、三人の規模の打ち合わせから千人、二千人規模の大会、更に、数十万人規模の集会に至るまで、会議には、いろいろのバリエーションがある。そして、その規模によって会議の在り方も大きく変わってくる。(「会議の開き方・すすめ方・まとめ方」 安達勉・澤田直孝・福山穣著 実務教育出版)

 会議には、会議独自の役割分担がある。その中心が議長である。議長は、議事の進行に対して、責任と権限を有する。この様な責任と権限は、会議の出席者から与えられる。

 議長権限が不明瞭だと議長は力を発揮することができない。議長は、会議の要なのである。ところが、議長が必要な職権を与えられず、雑用係か、司会者のような役割しか与えられていない会議すらある。また、議長役が複数いたり、議長以上の力を持つ者がいたりする。船頭多くしての喩え通り、会議が漂流することになる。たとえ、議長以上の力を持つ者がいたとしても議事の進行には議長の指示に従わなければならない。どんな小規模の会議、打ち合わせでも、責任者だけは明らかにしておく必要がある。

 また、日本ではよく事務局のない、又は、不明瞭な会議が多い。議長が事務的な仕事をさせられていたり、事務局がいつの間にか議長を兼任しているような場合がある。その為に、会議の準備が遅れたり、最悪の時は、何もされていない場合すらある。
 基本的に会場や器材の準備、招集手続き、出席者への連絡、資料の準備は、事務局の仕事である。議長は、立場上、これらの準備に直接関われない場合もあり得るのである。会議の準備段階では議長よりも事務局の働きの方が重要なのである。

 会議は、手続きによって支えられている。会議は、手続きによって正当性が立証される。それは、会議の招集そのものが手続きだからである。この手続きを担うのが事務局である。事務局を軽視すれば、会議がうまく運ばないだけでなく、正当性も損なわれる。会議は、議長がやるものだと思いこんでいる人が多くいるが、議長にできることは限られている上、議長は、職制上制約も多いのである。その分を補うのが事務局である。

 会議の主催者がハッキリしないと、会議の根拠が稀薄になる。つまり、会議の正当性が問われるのである。また、会議そのものが成立しなくなることもある。主催者が会議を招集するからである。招集権者は、会議の根拠となるからである。出所の怪しい主催者が招集した会議は、その成立基盤そのものが危ういのである。

 正式な会議には、書記が設定される。書記は必ずしも必要とされない。しかし、会議は、記録されてこそ意義がある。故に、正当な会議には、必ず書記が必要となる。記録のない会議は、結局、非公式な打ち合わせか、単なる話し合いでしかない。また、書記は、単に会議を記録するだけでなく、事務局と協力をして議長を補佐しなければならない。

 本論に入ってからは、発言者の役割が重要になる。本論に入ってからは、議事のリードをとるのは、発言者、即ち、提案者、報告者である。提案者や報告者が自分の役割、発言の主旨目的を見失うと、議事そのものが挫折する。発言することがかえってマイナスの効果を生み、以後の進行の障害、負担になることすらある。発言者は、その会議における目的や目標を予め明らかにしておき、必要な資料や器材を準備し、会議の流れに沿って提出し、会議の進行を促す必要がある。

 会議がうまくいかないのは、会議の議題が全体の流れにうまく乗れないからである。つまり、会議の議題が、仕事や組織全体の過程、前後の脈絡から乖離しているからである。関連性のない話は、浮き上がってしまい、会議は空転する。




        


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