会議の進行には、段階がある。段階の分類には、有名なのが、起・承・転・結である。また、導入、展開、集約、結論とか、序破急とかアプローチ、プレゼンテーション、クロージング、または、イントロダクション、ボディ、クロージングと言ったものがある。これらは、議事を進行する者の考え方、センスで決まる。
会議は、宣言に始まり、宣言に終わる。
議事の進行は、議長が行う。
正式の会議は、動議によって進行する。
会議を開催するには、暗黙の全員一致がある。
少なくとも会議が招集された段階で会議を開くという暗黙の一致がある。会議への出席は、この暗黙の了解への合意と見なされる。また、会議への出席は、会議の決定に従う事を意味する。それが嫌ならば、棄権という意志表示ができる。
暗黙の了解の中で重要なのは、結論の出し方である。結論の出し方は、会議の性格による。会議の性格は、議決を前提とした会議と議決を前提としない会議かによって決まる。
予め会議規則によって採決の方法が定まっていない場合は、最初に異議を問う。異議なしと認められれば全員一致と見なす。異議ありとされれば、採決の方法を問う。例えば、多数決によるか、一任を取り付けるか等である。この場で採決の方法が定まらなかったり、時間に制約がある場合は、議長の判断で一旦採決から外し、一定の時間をおいて再度採決を取る。
議事の進行には、多くの暗黙前提がある。暗黙の前提となる事項は、会議を主催する社会の文化的文脈に基づいている事項が多い。その点を良く注意して議長は議事を進行する必要がある。
日本人は、会議と話し合いを明確に区分できない人が多い。話し合いの前提は、話せば解るだが、会議の前提は、話しても解りあえないである。話しても解り合えないことを前提とするから、規則や手続が重要なので、又、議長が必要となるのである。
組織的会議がマンネリ化しやすいのは、組織的会議は定例化しやすく、定例化した会議は定型化しやすいからである。もし定例的会議を活性化したいならば、定期的に会議の形式を変えることである。ただ定例的会議と一のは、業務の一環として調整的な働きを持つ会議が多い。それ故に、マンネリ化を防ぐと言うだけで形式を変えることは、本末転倒である事だけは、忘れないで置く必要がある。仮に、形式を変えるとしても、本来の目的を確認した上で、目的を逸脱しない範囲内で会議の形式を変えなければならない。
定例的会議は、部門を基準とする会議、期間を基準とする会議、業務を基準とする会議がある。期間を基準とする物には、デイリー、ウィークリー、マンスリー、イァリーな会議がある。部門を基準とした会議には、縦断的な会議と横断的会議があり、横断的な会議には、第一に、担当者会議、第二に、管理職、担当責任者会議、第三に、幹部会議の三つがある。業務を基準とした会議には、第一に、立ち上げ、開始、それに伴う、オリエンテーション、ガイダンス、第二に、中継、引継、それに伴う、報告や引き渡し、第三に、終了、閉会、それに伴う、報告や儀式などがある。
会議の進行は、定型的会議の進行に準じて設計される。
先ず会議の導入部分(イントロダクション)である。第一に、開会の辞。第二に、前提条件の説明。第三に、議題の取り扱い関して、第四に、議事の進行に関して、そして、第五に、若干の補足説明をする。その上で開会宣言をする。
開会の辞には、議長挨拶やコメントを含んでいる。前提条件とは、経過報告や背景説明、議事進行に関して、議事進行上のルールと注意事項である。
最後に閉会部分である。第一に、会議の総括である。第二に、議事内容の確認。できれば、議事録の確認である。第三に、次会までの予告、そして、次会までにやっておくべき事。もし、最終回ならば、最終決議の確認、そして、第四に閉会の辞である。最後、第五に、閉会宣言である。
初回の会議、即ち、開始、立ち上げの会議(キック・オフ・ミーティング)と中間に位置する会議、中継会議と終点、終了会議とでは、会議の展開が違う。
初回の会議(キック・オフ・ミーティング)は、先ず議長の選任をする。議長が選出されるまでは、準備会、又は、事務局が代行をする。議長の選出は、慣習、慣行、一般に公正妥当とされる選出方法を予め、準備会、又は、事務局が用意しておく。別段異議が出なかった場合は、準備会、又は、事務局が用意した方法に従って議長を選出する。異議のある者は、異議の理由を申し立て、対案を示す。対案を示せない場合は、用意された選出方法に従う。対案が示された場合は、決議をもって議長の選出方法を決める。
初回(キック・オフ・ミーティング)だけは、開始手続きを準備会か事務局が行う必要がある。それは、会議に先立ち、先行的手続きがあるからである。しかし、この準備段階での組織は、非公式、未公認な組織である。それを公式な組織、公認の組織に置き換える必要がある。その為に、議長を新たに選出し、事務局から権限を引き渡し儀式・手続きが必要となるのである。
初回以後の以後の会議は、原則的に、議長が最初から取り仕切る。
中間的に会議は、前回の議事録から始まる。それに対し、初回の会議は、会議の主旨・目的からはいる。最終の会議は、セレモニー、式典で終わる。セレモニーは、終了の手続きを様式化したものである。
初回の会議では、議長が選出されたら、議長は、先ず自己紹介をする。その上で、必要に応じて書記を指名することができる。そして、初回は、会議全体の議事の規則を議長が説明し、承認を受ける。
次に、会議全体の主旨、目的を明らかにする。
その上で議事進行の手順と手続き、規則についての説明をする。さらに、個々の議題の主旨と手順、処理方法の概要を説明した上で、提案者を紹介する。(簡略的な会議、日常的な会議ではこの部分は、省略してもかまわない。)
そして、議事の開始を宣言する。
議事進行の説明をするためには、式次第、切れ目ない会議か、二部会議、又は何部かに分けてやるのか、また、所要時間を議題毎に予め設定し、休憩時間の有無、取り方を予め決めておく必要がある。また、議題の取り扱い、処理の仕方について、それぞれの責任者、担当者と打ち合わせをしておく必要がある。会議に際しては、冒頭において、議題の取り扱い、処理の仕方について会議の出席者に説明の上、承認を受ける必要がある。
以上をまとめると、正式の会議においては、議長は、会議の主旨と会議の規則を説明し、承認を受ける。そして、議題、議事の式次第、進行に対して了承を受ける。それから、議事進行上の注意をする。その上で議事を開始を宣言するのである。
会議には、会議の本論に入る前に、前処理と後処理がある。会議は、仕事や組織の部品である。故に、前後の仕事との接続部分を持っていなければならない。
前処理と後処理はこの接続部分であり、会議と会議の連結、前後の作業と会議の連結を司(つかさど)る部分である。
故に、前処理は、初回の会議では趣意書を、中継的会議、継続中の会議ならば、前回の会議の議事録の確認からはいる。次に、前回の決定事項とその後の経過報告を行う。この事によって、会議の目的を明らかにし、目標を予め設定するのである。例えば、方針の検討を目的とし、基本的考え方の結論を出して文章にまとめる事を目標とすると言う様にである。
前処理の目的は、前回の議事録を確認し、その後の経過、即ち、事前の作業を確認する事である。後処理の目的は、議事録の確認と閉会後の処理についての説明をする事である。前処理と後処理には、事前・事後の確認によって、仕事や組織全体の整合性や繋がりを保つ作用、役割がある。もし会議の位置付けが解らなくなったら、前後の会議や作業に戻って検証することが大切である。会議は、情報や作業の流れの中に位置付けられているのである。
会議の内部に議事を処理する以外の作業、例えば計画書や報告書、提案書の作成とか言った作業を議事の進行中に行う事は、特別な事例、会議、例えば研修会型の会議のようなものでないと難しい。
故に、会議中に何らかの作業を組み込む時は、予め計画し、準備しておく必要がある。
構成の処でも明らかにしたように、本論を構成する要素には、第一に報告、連絡、第二に、説明、第三に、指示、命令、第四に、相談(問題提起)、第五に、提案、発意、第六に、質疑応答、第七に、意見交換、討議、討論、第八に、採決、第九に、確認、第十に、記録、保存の十ある。会議の目的と機能に併せてこれらの要素の配列を決め形式を整えていく。
これらの要素の組み立ては、会議の目的、機能、会議を開くための前提条件によって違ってくる。
前提条件とは、前段の作業による部分が大きい。それ故に、経過報告が重要になるのである。しかし、経過報告が増長になると会議の実質的な時間が損なわれる。故に、経過報告は、事実関係だけを要点のみ、手短に報告できるように心懸ける。その為には、可能な限り、経過報告書を作成し、事前に関連部門の確認、承認をとっておく必要がある。
議題の検討の筋立ては、その会議の目的によって決まる。例えば、意思決定を目的とした会議では、最初に提案し、その後に質疑応答の上、意見交換をして、採決をとると言う具合にである。また、同じ意思決定でも、前提条件が違えば、最初に報告があり、それに対し、質疑応答の上、提案をした上で採決をとると言ったように変わってくる。また、いきなり採決を取り、その後に、質疑応答・意見交換をした上で、再度採決をとるという会議の組み合わせもある。
目的が情報交換の場合、報告をした上で、質疑応答をして、確認して閉会とすると言う具合である。
情報交換を討論を通じて行う場合は、発言者、パネラーが自分の立場、意見を説明した上で討議討論を繰り返し、採決をとる。
また、情報伝達の場合、指示、命令を伝達した上、質疑応答、確認の上散会する。
問題解決を目的とした会議では、最初の趣旨説明をした後、出席者の発意を書き留め、それを整理分類した上で確認して記録すると言った具合である。
また前段の作業の進捗状況によって会議の様相も変わってくる。前提条件として前作業である調査が終了した場合と、終了していない場合では、報告の内容が変わったり、提案が報告に変わったりする。必ず前提条件、特に経過報告や、状況報告、進捗状況に対する報告を冒頭に、確認する必要がある。
この様に目的や機能、前提条件によって会議の展開や進行は変化する。
ただしいずれの場合でも、会議の責任者は、会議の目的や機能、前提条件に基づいて予め計画を立てておく必要がある。
後処理は、会議の決定事項に基づく事後手続き、事後の作業、次会の会議までにやっておくべき事の明確化と整理である。特に、決定事項を実務、作業に置き換えておく必要がある。その為には、俗に言う、5W1Hの確認が必要である。
会議終了後の補助的会議、打ち合わせ、事務局会議で、具体的な話に煮詰める必要がある。その為には、補助的会議は、基本的に担当者会議、実務者会議でなければならない。
実務者会議は、司令室型会議、タスク会議とも言われる。この様な会議は、出席者は何らかの仕事を背負ってくる。実務者会議は、その性格上、出席者を必要最小限にとどめる必要がある。その為には、仕事に直接関係ない者を排除する。つまり、会議に出席する者は、何らかの仕事を背後に持っている。そして、その背後の職務に基づいて発言をする性格がある。
そして、多くの場合、職務に裏付けられた権限と責任を必要としていなければ、会議の効力を発揮することができない。それ故に、会議に先立つそれぞれのもつ権限の確認を必要とする。
この後処理は見落とされがちだが重要な要件の一つである。後処理がいい加減だと会議が竜頭蛇尾となる。後処理の是非によって決定事項が実施されるか、守られるかが決まる。決定事項が実施されるか、守られるかは、次会の会議の成否を握っている。つまり、次の会議の成否は、当会議の事後処理のいかんに関わっている。この様に、会議というのは、連携的なものであり、一つの会議の問題点は、次々と先送りされていく傾向がある。最初の些細な問題点が後になると増幅されて致命的な問題点に発展する可能性がある。だから、会議の終了時には、必ず、後処理を明確にし、その場で実務に落とせなくとも、補助的会議、打ち合わせ、事務局会議、事務連絡会議だけは、設定しておくように心懸ける。
もう一つ重要な事は、連続的な会議ならば、次会の会議の事について決めておくことである。日時、場所は、出席者は、当然な事であるが、できれば、会議の式次第、議事日程まで決めておく必要がある。よく、会議の式次第、議事日程、進行表を間際になって相談したり、決めようとする者がいるが、これは根本的な錯覚である。会議というのは、未来志向なものであり、過去回帰的なものではない。つまり、会議の決議事項は、次会の会議に向けた作業仕様でなければならない。会議の議事録は、そのまま、作業リストであり、作業計画書にならなければならない。次会の会議予定は、それ故に、作業目標であり、一定の目安となるものである。とするならば、次会の会議予定が立たなければ、作業予定、計画が立たないことになる。次会の会議は、当面の作業目標であり、それ故に、意義がある。議事録の確認をただ単なる儀礼的なものと捉える者がいるが、その様な者は、実務のなんたるかを知らないのである。最初と最後に議事録を確認するのは、意味のないことではないのである。
会議の予定が立ったら、会議を実際進行することである。会議の進行は、議長が司(つかさど)る。議長は、会議の進行に責任をもたなければならない。
会議の進行を制御するためには、議長は、会議の筋を読むのではなく。変化を読まなければならない。筋よりも変化を読むというのは、話の粗筋や議事の展開を一本筋で読むのではなく議事がどの様に変化するか、読むという事である。
野球で言えば、一番バッターがヒットででたら二番バッターは、バントで送るというように読むのではなく、ワンアウトで一塁に走者がいて、バッターが誰々だったら、バントのサインを出すというように、局面局面の変化を予測して対策を立てるという意味である。計画を立てると計画の展開を一筋で読んでいるものがあるが、予測以外の変化が起きた時、対応できなくなる。先に対しては大筋を読んでおいて、局面局面の変化に対する対策を立てておくのが、現実的である。
会議で言えば、議題の処理について大筋を決めておいて、実際の進行は、実際の進行に応じて変化させなければ、議事の進行を制御する事はできないのである。狭い幅で、議事の進行を読んでいて、議事か行き詰まると、パニックな陥ってしまうようでは、議長の職責は果たせないのである。
参考文献
「ミーティング・マネージメント」八幡紕芦史著 生産性出版